腸内細菌による健康維持機能の解明
ヒトの消化管には大量の微生物が共生しており、消化の補助のみならず、ヒトに有用な代謝産物の産生や免疫系の活性化など重要な役割を果たしている。そのため、これら共生微生物の働きなしには健康な生活はおくれない。バクテロイデス属細菌はヒトの消化管の主要な共生細菌として、ヒトの健康維持に必須の役割を果たしている。この際、細菌による自然免疫レセプターの活性化が重要な役割を果たすと考えられている。バクテロイデス属細菌は、グラム陰性菌に分類される細菌であり、リポ多糖をはじめ菌体内の多くの成分が免疫系を活性化しうる。しかし、それぞれの成分の働きについては不明な点が多い。
近年我々は、モデル細菌である Bacteroides fragilis を用いて自然免疫活性化リガンドを検討し、細菌表層のリポタンパク質が自然免疫の活性化に関与することを明らかにした(1)。
そこで本研究では、腸内細菌由来のリポタンパク質が消化管内で果たす機能について検討し、ヒトの健康維持に対する役割を明らかにする。
1) Innate Immun. 19 , 132-139 (2013) [PMID: 22890547]