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乳酸菌のアレルギー抑制機能性分子の探索

 近年、花粉症やアトピー性皮膚炎等のアレルギー性患者が急増しており、疾患による日常生活への影響が社会的に問題となっている。これまでにアレルギー患者の増加の原因として、患者の疫学的調査を元にして「衛生仮説」が提唱されている(1)。これは、衛生環境の改善や乳幼児期の感染症罹患の減少に伴う微生物成分への暴露機会の減少が、アレルギー患者の増加に影響するという仮説で、先進国でのアレルギー患者の急増をうまく説明するものとして受け入れられている。

 アレルギー性疾患は、ヒトの免疫機能を制御するヘルパーT細胞のバランス異常と関係していると考えられている。古典的にはヘルパーT細胞は、微生物やウイルスなどの感染防御に関わるTh1型と、B細胞からの抗体産生を誘導するTh2型の2つに大きく分類できる(2)。通常この両者は相互に抑制し合いバランスを取っているが、アレルギー患者ではTh2が過剰になっておりTh1が抑制されてバランスが崩れている。その結果IgE抗体の過剰産生が促進されアレルギー反応につながる。そのためTh1とTh2のバランスを改善すれば、アレルギーを緩和できる可能性がある。

 近年、微生物成分がヒトの初期生体防御システムである自然免疫を活性化する機構が明らかになってきた。また、さらに免疫系全体の制御にも関与しうることが分かってきており、微生物成分がT細胞の働きを制御をして免疫系の恒常性を維持している可能性がある。すなわち衛生仮説は、微生物成分への暴露の減少が、自然免疫を介したT細胞の制御を乱し、アレルギー状態へ導くことを示唆しているのかもしれない。

 そこでプロバイオティクスと呼ばれる食用微生物を摂取し免疫系を制御しようとする試みが行われている。例えば乳酸菌摂取によるアレルギー抑制作用は良く知られている。しかし、これらについて物質レベルにおける機能発現機構はほとんどわかっていない。本研究では、乳酸菌などの食品発酵に関与する微生物から、アレルギー抑制作用を持つ物質を分離し、その構造と機能発現機構を明らかにすることを目的としている。

 

 

1) BMJ, 299, 1259-1260(1989) [PMID: 2513902]
2) Immunol. Today. 18, 263-266(1997) [PMID: 9190109]

   

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