植物共生細菌の植物免疫反応制御分子の解析
根粒菌は、マメ科植物の根に感染して根粒と呼ばれる器官の形成を誘導し、その中で生物的窒素固定によって大気中の窒素ガスをアンモニアに変換し植物に供給する、共生細菌である。しかし、根粒菌とマメ科植物の間には厳密な種特異性が存在するため、特定の植物種にしか感染できない。近年この種特異性には、種固有の植物フラボノイドや、Nodファクターと呼ばれる根粒菌に種特異的なリポオリゴキチンなどのシグナル分子の交換による情報伝達が関与していることがわかってきた。しかし、この系だけではすべての特異性は説明できない。
これまでの研究で、マメ科植物と根粒菌の共生成立には、植物根でのNO の一過性の産生が重要であることが示されている(1 ,2)。またこの反応には根粒菌のリポ多糖が関与することもわかった(3, 4)。最近我々は、一過性のNO産生には、リポ多糖の糖脂質部分であるリピドA(5)ではなく、多糖部分が寄与すること、認識されるリポ多糖の部分構造の違いによって植物に対する反応性に差が出ることを明らかにした(4)。
そこで本研究では、植物によって認識されるリポ多糖の構造を明らかにするとともに、細菌-植物間の情報伝達による植物免疫反応の解明を通じて、根粒菌の共生反応の制御による農業生産の改善を目指す。
1) Plant Cell Physiol. 46, 99–107 (2005) [PMID: 15668209]
2) Mol. Plant Microbe. Interact. 21,1175–1183 (2008) [PMID: 18700822]
3) Plant Signal. Behav. 4, 202–204 (2009) [PMID: 19721749]
4) Plant Cell Physiol. 52, 610–617 (2011) [PMID: 21330297]]
5) Microbes Environ. 27, 490-496 (2012) [PMID: 23059724]